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人力車

人力車

24.九月十八日の唄

24.九月十八日の唄  
      
海水浴場は 海の家もたたまれて 
夏の夕焼けが空を真っ赤に染めた頃
町の小さな病院で 君は産声を上げた 
小さなおちんちんが銀の鈴のようにゆれていた
うちにやってきた君は 大の字に寝転んで 
眠くてもお腹すいてもウンチが出ても
ひたすら泣いて
夜通し泣き続ける君に早く寝ろと呪文をかけて 眠った君の顔にフット心洗われる
下痢して顔をは真っかか 熱は38度5分 
夜中車飛ばして「助けてください。」と泣きついた
看護婦さんはあきれた顔で笑ってみてるけど 
ただの風邪でも死ぬんじゃないかとうろたえた
ただ生きてるだけで 
それでじゅうぶんだったのに  
期待ばかりがふくらんで
日に日に怒りんぼになってく
ごめんね 思い出すよ あの日願ったこと  
ただただ 優しい人になってね

初めての面談で 先生にほめられて 
そんなまともなしつけはしたよな
覚えはないけれど
親の心配をよそになんとかやってたんだね 
知らぬ間に君も育ってたことにおどろいた
始めてのテストに 飛び上がって喜んで 
はては博士か大臣かもしくは歌手かと大騒ぎ
2回目のテストの結果にうなだれて 
やっぱりかえるの子はかえるだったとあきらめた
勉強がだめなら これはスポーツしかないと 
運動会のお弁当にはウインナーをたこにして
徒競争に負けた君にがっかりしてたら 
PTAの親子リレーで思いっきりこけた
ただ生きてるだけで 
それでじゅうぶんだったのに  
期待ばかりがふくらんで
日に日に怒りんぼになってく
すごくなくても えらくなんかなくてもいい  ただただ 優しい人になってね

追われてく毎日の暮らしの中で 
いらだちをつい君にぶつけてしまうことがある
不用意な言葉で傷つけさびしい思いをさせている 自分の弱さにくらしくおもう
それでも君はいつもこんな私をみつめ 
風呂上りには必ずアイスを持ってきてくれて
そりゃあ自分の分も持ってくるのは
忘れないけれど そんな君を愛しく思う
大事に育てていた クワガタが死んだとき 
近くの公園で二人土の中に埋めた
背中を震わせ手をあわせそっと君はつぶやいた 今まで遊んでくれて本当にありがとう
ただ生きてるだけで 
それでじゅうぶんだったのに  
期待ばかりがふくらんで
日に日に怒りんぼになってく
だけど何もいらない 生まれてくれてありがとう  ただただ 優しい人になってね
ただ生きてるだけで 
それでじゅうぶんだったのに  
期待ばかりがふくらんで
日に日に怒りんぼになってく
ごめんね 思い出すよ あの日願ったこと  
ただただ 優しい人になってね




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